東ヨーロッパに属するエストニアは、ソビエト連邦時代からの技術や経験を生かし、電子立国と呼ばれるほどITとブロックチェーン技術が行政の中でも活用されています。国民IDシステムはエストニアに暮らす国民に向けの行政システムですが、エストニア以外で暮らす人に『e-Resident』が発行されています。申請すれば誰でも手にすることのできるe-Residentと、計画の縮小が迫られたエストニア国のICOについて紹介します。
躍進を続けるエストニア!仮想通貨国民と国を上げたICO
プラットフォームや中央権力の仲介なしに、個人と個人が直接やり取りをするP2P(peer-to-peer)を基盤にしたスカイプは、エストニアで誕生しました。
2011年にマイクロソフト社に買収されましたが、ソビエト連邦時代からIT関連を得意分野としてきた歴史が色濃く影響しています。
また、世界における報道の自由度ランキングでは、常に上位に上がっていることからも、自由な発想や斬新な意見が生かされやすい環境がエストニア国内にあることがわかります。
仮想国民になれるe-Residentとは?
※動画引用元:『How to manage a global business with e-Residency in Estonia』 e-Residency公式YouTube
エストニアは、国民に向けてIDシステムを活用していますが、2014年からは現内閣総理大臣の安倍晋三氏も登録していることでも知られている外国籍人向け仮想国民評である「e-Resident」を提供しています。
e-Residentは、エストニア国家が目指す国づくりにおいて重要な役割を果たし、海外で暮らすエストニア国民と同様に、外国人が簡単にe-Residentを取得できます。
画像引用元:REPUBLIC OF ESTONIA E-RESIDENCY
e-Resident保有者は、エストニア国家が提供する電子行政サービスが平等に受けられ、エストニアでの起業はもちろん、ビジネス用の銀行口座も開設でき、納税もオンラインで進められます。
永住権や滞在ビザとは異なりますので、ブロックチェーン上の仮想国民にあたります。
e-Residentの申請はインターネットを通して簡単に進められますが、仮想国民を目指す人が増えているために、2018年12月の状況では手続完了までに3カ月程かかる状況になっています。
必要な書類はパスポートと申請料の100ユーロ(約13,000円/2018年12月現在)です。
すでに35000人がe-Residentを取得し、世界中にエストニアの仮想国民が誕生しています。
エストニアでは、日本と同じように少子化が進み、有望な人材を確保したい思惑もありますが、国をあげてブロックチェーン国家を目指す先には、国境のない国づくりを見据えています。
留学生の受け入れも積極的に行い、そのままエストニアに滞在する学生も多く見られます。
国家プロジェクトで計画されたエストニアのICO
さまざまなチャレンジを実行しているエストニアでは、国家が中心になるICOを計画していました。
ICOは新しいプロジェクトを始めるために、仮想通貨を活用する資金調達方法です。
ICOを通してエストコイン(estcoin)の発行を準備していましたが、ヨーロッパ中央銀行のトップであるマリオ・ドラギ(Mario Draghi)氏から厳しく釘を差されたことで、計画内容を大幅に変更しています。
独立国であるエストニアの計画に、どうしてヨーロッパ中央銀行が関わりを持つのか、疑問に思われる人もいるでしょう。
エストニアは独立国ですがEUに加盟をしているため、EUのメンバーである以上ユーロだけが共通通貨です。
エストニアのICO計画は、今までにない発想のため、大きく報道もされましたが、e-Resident保有者の間で使われるコインに軌道修正されているようです。
エストコインはユーロと等価交換できるステイブルコインではなく、あくまでも仮想住民間での限定使用です。
ソビエト連邦の一部であった時代からIT関連の知識や技術に優れた才能を発揮してきたエストニアが、世界で唯一とも言えるブロックチェーン立国を形成しました。
100年の間に独立という大きな歴史的岐路を2回も迎えていることからも、柔軟な思考と飛躍するための原動力が国の基盤にあります。
誰もが仮想住民になることができるe-Residentの発想は、IT後進国と呼ばれる日本が、これからの未来で躍進するための大きなヒントがそこにあるのではないでしょうか。