経済制裁の影響から、経済的に困窮しているとみられていた北朝鮮。次々とミサイル実験を実施している背景に、国を挙げて仮想通貨をハッキングしているのではないかとみられていましたが、脱北者がその様子を詳細にメディアに語っていたことがメディアによって報じられました。
北朝鮮脱北者がサイバー軍について語る
経済制裁包囲網が北朝鮮を圧迫するにつれ、外貨獲得が難しくなっていた北朝鮮が、アメリカの制裁もどこ吹く風といった具合に、次々とミサイル実験を強行突破し続けています。
経済的にも困窮しているはずの北朝鮮が、なぜ、莫大な資金を要するミサイル実験を次々と実行し続けることができるのか。
※北朝鮮に関する当サイトの特集記事「北朝鮮が経済制裁から逃れる手段としてサイバー攻撃で5億ドル入手」、「経済制裁包囲網が迫る北朝鮮が仮想通貨を利用した闇市場で荒稼ぎ!?」もあわせてご覧ください。
その背景には仮想通貨取引所の脆弱性を突き、自国軍隊にサイバー部隊を結成させ、莫大な外資を盗み出し、その被害額は2,000億円とも2,200億円とも言われています。
昨日、日経ビジネスが元サイバー部隊に所属していた脱北者とのインタビューに成功した様子を報じました。
※北朝鮮のハッカーに関する当サイトの特集記事「北朝鮮のハッキンググループがテレグラムを使用していたことが判明!」、「アメリカが北朝鮮ハッカー集団のラザルスを制裁対象として認定!」、「コインチェック大量流出事件関与のハッカー集団は北朝鮮?ロシア系?」もあわせてご覧ください。
この脱北者は北朝鮮でサイバー部隊に入隊し、咸興(ハムン)コンピューター技術大学に入学したエリート学生を対象に教えていた元北朝鮮の大学教員金興光(キム・フングァン)氏と紹介されており、現在はソウルに在住していると紹介されています。
同氏は現在、脱北者として北朝鮮政府からマークされる重要人物として認定されている中、脱北した知識人らで組織する非営利団体、NK知識人連帯の代表を務めているという。
IT重点大学の役わりとは
北朝鮮政府が指定するIT重点大学の一つとして高度技術をエリート学生らに教えていた金氏によると、IT重点大学へは優秀な成績で高校を卒業する生徒を全国から毎年500人ほど入学させ、高度なIT教育を施していると語っています。
大学入学後、さらに優秀だった卒業生は朝鮮労働党直轄の諜報機関、偵察総局のサイバー部隊に進み、外国から機密情報を盗んだり、システムを壊したりする“国のハッカー”としてのキャリアを積み、軍や諜報関係者の中でも羨ましがられるほどの超エリートとのこと。
主に平壌で活動をしているほか、中国との国境近くに位置する鴨緑江や豆満江沿いなどにも拠点があり、中国、タイ、マレーシアなどのアジア諸国や東欧諸国へハッカーが散らばり、建設労働者や商社の社員、留学生、研修生だと身分を偽り、全世界に対してハッキングを仕掛けていると証言しています。
中でも金正恩氏が設立し、自身の誕生日からちなみんで名づけられた「180部隊」が各国の金融機関および仮想通貨取引所を狙ってハッキングによって外貨稼ぎをしているという。
盗んだ資金は核開発資金へと流れていた
180部隊に所属する北朝鮮ハッカーらは、各国の金融機関や仮想通貨取引所をハッキングし、盗みだされた巨額資金は、核爆弾、長距離ミサイル、潜水艦発射ミサイル、可搬型の超小型核爆弾、サイバー兵器の5大核打撃力の開発費用に充てられていると話しています。
180部隊には、日本語を勉強している隊員も多く存在しており、ソフトウエア開発市場に進出した同部隊は日本をターゲット市場として受注なども行われていると証言しています。
昨年3月9日付の日本経済新聞による報道で、2017年から2018年にかけて、北朝鮮が経済制裁から逃れて外貨獲得を行うための手段としてサイバー攻撃を強めていると報じています。
2017年1月から2018年9月までの約2年間の間に仮想通貨交換所へ判明しているだけでも5回のサイバー攻撃を行っていたことが分かっています。
アメリカの強硬な北朝鮮に対する非核化を求める要求に対し、北朝鮮は依然として開発を続けています。
経済制裁包囲網がより広範囲にと制裁されていく中でも北朝鮮は核開発を推し進めています。
今後、アメリカがどこまで経済制裁を広げるのか、また、北朝鮮はどこまでサイバー部隊を拡大していくのか。
これらが不透明な状況のなか、標的にされている日本の仮想通貨取引所および金融機関は、より一層のセキュリティー体制を迫られそうです。