仮想通貨の基盤技術として誕生したブロックチェーンが、さまざまな業界に枝葉を広げながら進出しています。ブロックチェーン技術の浸透は日本から遠く離れた国でも進み、同時に私たちの暮らしの直ぐ側でも進行しています。保険会社を通して加入することが当然であった保険業界にもブロックチェーン技術の波が打ち寄せ、保険のあり方を変える可能性が見られます。
日常や常識を刷新するブロックチェーン
ブロックチェーン技術の浸透により、従来の形態とは大きく異なる新しいスタイルになる業種が、数多くあると言われています。
実は私たちの暮らしは、多くのことが中央で管理をする企業やグループが存在し、中央管理者を通して買い物をしたり、サービスを受けたりしています。
日常の小さな取引から国同士の支援や取り決めを実行するのに、銀行の存在は欠かせません。
自分の口座にあるお金をおろしたり、送金したりするときに銀行が間に入り、依頼通りの手続きを実行してくれます。
ところが、仮想通貨を所有し取引を行ったことがある人は、今までは必然と思ってきた銀行の存在なしに、売買や送金が迅速完了できることを実感しています。
ブロックチェーン技術を使用することで、今までは中央管理者なくしては成り立たないと思われてきたことを、P2P(peer-to-peer)であるブロックチェーン技術が可能にします。
保険業界のあり方を根底から変えるブロックチェーン
仮想通貨が誕生したばかりの頃はビットコインばかりが知名度を得ていましたが、最近になりブロックチェーン技術が持つ特質から、仮想通貨や金融業界以外でも広く活用されています。
ブロックチェーンでは取引や売買を行っても中央管理者なしに、正しい取引が承認され、改ざんがほぼ不可能です。
イーサリアムブロックチェーンはスマートコントラクトが実装されていることから、参加者同士が交わした契約が第3者の介入なしに確実に実行される仕組みです。
今までは、手数料などを支払うことで第3者機関に依頼をしてはじめて成り立つと思っていたことが、中央管理者が不在のまま契約し完結できます。
車を持っている人は自動車保険、海外に行くときは旅行保険など、万が一のことを考えて保険会社が提案しているプランに申し込みをしているでしょう。
実は、保険契約とブロックチェーン技術はとても相性が良く、ブロックチェーンの活用が保険のあり方を大きく変える可能性があります。
国際市場調査情報を収集するResearchAndMarkets社が『Peer2Peer Insurance Global 2018』で、ブロックチェーン技術が保険業界を刷新する可能性を発表しています。
個人と個人が結びつくP2P保険が誕生すると、グループ化された人たちの中で相互に協力関係を作り助け合う保険になり、保険業界が塗り替えられる内容が書かれています。
実装実験に乗り出す保険会社
保険会社の存在なしにすべての保険が成り立つ日が来るのかどうか、まだまだ未知数な部分があります。
保険業界でも、ブロックチェーンが拡大する近未来を見据えながら、積極的にブロックチェーン技術を活用した実装実験が行われています。
5人に1人の割合で、糖尿病に悩む妊婦のいるシンガポールでは、大手保険会社MetLife社が、ブロックチェーン技術を導入し、糖尿病と診断された妊婦に自動的に保険金が支払われる試験計画を発表しています。
スイスに拠点を置き53,000人もの従業員がいるチューリッヒ保険グループでも、ブロックチェーン技術を導入することで、業務の透明を重視し簡素化を目指しています。
利害問題が発生したときにも、正確性を保ちながら合理的な手続きが進められることから大きな期待が寄せられています。
国内最大手とも言われる東京海上日動でもNTTデータ社と共同で、ブロックチェーン技術を用いた実証実験が2016年12月から2017年3月にかけて行われました。
通常業務の場合には、事故発生後に加入者からの連絡を受け担当者とのコミュニケーションが始まり、実際に保険金が確定するまでに多くの時間とコストがかかります。
ブロックチェーン技術を導入して、事故発生後のやり取りを行うことで、人為的なミスが防止され、コスト削減ができると期待されています。
今の常識が10年後の常識とは限りません。
情報収集をしながら、今後の行く末を見守っていきましょう。